祝・10周年
WHOプログラムが10周年を迎えたことはとても喜ばしいことです。 このプログラムによって手指衛生が大幅に改善され、医療関連感染減少につながりました。
医療関連感染(HAI)の患者数は世界中で何億人にものぼるとWHOは報告しています。 「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の他、患者ケアの過程で感染した重症感染症により、人々が死亡したり、重篤な状態に陥ったりしています」とジュネーブ大学病院の感染対策プログラムの責任者、WHO First Global Patient Safety Challenge: Clean Care is Safer Care(清潔なケアは安全なケア)の外部理事でもあるDidier Pittet教授は述べています。 「医療従事者は自身の手を清潔にすることで、そうした疾患の予防、さらには世界的負担の減少に貢献できるのです。」
Pittet教授、WHOキャンペーンにコメント
「Clean Care is Safer Care」プログラムは、2005年10月に導入され、2015年で10周年を迎えました。 このプログラムは院内感染症を減らし、その影響を軽減するための活動として、 医療従事者の手指衛生に重点を置いています。 多くの前進がありました。 Pittet教授はインタビューの中でキャンペーンの成果に関するコメントを残しています。

医療関連感染(HAI)に関して、手指衛生への取組みが重要な理由とは?
Pittet教授:手指衛生は、医療関連感染を予防し、抗菌薬耐性の拡大を阻止する第一歩となります。 世界でも、多くの病院や医療現場で職員の手指衛生の遵守率はまだ低いのが現状です。 世界保健機関(WHO)が推進する多角的戦略を開業医が適用すれば、手指衛生の遵守率が大幅に改善されることがわかっています。 多角的戦略の重要な柱ともいえるのは、スタッフ教育、モニタリングと成果のフィードバック、職場での注意喚起、安全を考える組織としての文化、システムの変更、この5つです。 システムの変更とは、WHOのモデル「Five Moments for Hand Hygiene(手指衛生5つのタイミング)」の正確な指示に従って、組織全体で擦式アルコール製剤を使用することです。 この5項目については、WHO手指衛生自己評価フレームワークを利用すれば、医療機関ごとに定期的にモニターできます。 世界中で好成績を収めた病院には、Hand Hygiene Excellence Award(手指衛生優秀賞)が授与されます。
たとえば、キャンペーンが何年か後に中止されていたり、そもそも導入されていなかったとしたら、今ある、どのような成果が欠けていたとお考えでしょうか?
Pittet教授:手指衛生推進の成功は、世界中で医療関連感染率の大幅な低下につながり、その結果、疾病率や死亡率が低下し、医療制度におけるリソースの無駄な使用も抑えることができました。 推計では、WHOのキャンペーン「Clean Care is Safer Care」によって医療現場における手指衛生が改善され、毎年500万~800万人の命を救える計算になります。 つまり、毎年数百万人もの命をみすみす失うことになってしまうのです。
このキャンペーンでは、数ある目標の中でもとりわけ、患者の安全における手指衛生の有効性について人々の意識を高めています。 10年後には、まだ何かすべきことがあるでしょうか? これからの10年間は何に重点を置いたらいいでしょうか?
Pittet教授:世界中で実際に成果をあげた病院や医療現場が多いことは事実ですが、すべてというわけではありません。 目指すのは、患者ケアが行われるあらゆる場所で、あらゆるケアの場面に浸透させることです。 まだ、長い道のりです。 Save Lives: Clean Your Hands キャンペーンには、179ヵ国2万施設を超える病院が登録されています。 この2万の施設が、それぞれ別の3施設に参加を呼びかけることができれば、キャンペーンの規模はたちまち広がり、患者の安全が向上し、これまで以上に命を救うことができるでしょう。 感染対策と患者の安全への入り口となったClean Care is Safer Careの10年間の成果の一部をまとめたビデオがあります。 2016年には感染予防・対策を担当する部署がWHOに新設され、ますます多くの課題が取り組まれることになります。 中でも、介入の成功、拡大、持続可能性に関連する要因を理解し、システムおよび行動の変化を維持するための手段を導入する必要があります。
手指衛生
WHOとB. Braun
B. Braunは、世界保健機関(WHO)のPrivate Organizations for Patient Safety(POPS)のメンバーを務めています。 POPSは、WHOの「Clean Care is Safer Care」プログラムの目標に基づいて手指衛生を改善し、医療関連感染を減らすことを目標としています。 B. Braunは、手指衛生の重要性に対して世界的な関心を高める取組みを行っています。